クリプトコリネ アンナミカは中央ベトナムのダナンやフエ付近に分布。リム外縁は黄色で内部は茶褐色になる比較的小型の仏縁苞といえよう。
Cryptocoryne annamica クリプトコリネ アンナミカクリプトコリネ アンナミカは、1991 年にロシアの植物学者 Serebryanyi(セレブリャヌイ)が、ドイツの水草専門誌『Aqua Planta』で記載したベトナムの種です。もとになった株は、サンクトペテルブルク大学の爬虫類学者 Orlov(オルロフ)氏が現地で採集したものと伝えられています。種小名の annamica は、ベトナム中部の古い地域名「アンナン(安南)」に由来します。
この種は、産地の理解が後から整理された経緯があります。記載のときに引き合いに出された古い標本が、じつは別の種のものでした。1994 年に Hertel(ヘルテル)と Mühlberg(ミュールベルク)が、ダナン近郊のバナ山地の個体群を Cryptocoryne vietnamensis(ベトナメンシス)として別種記載し、両者は区別されるようになります。当店のページに書いてある「ダナンやフエ付近」という産地は、現在の整理ではベトナメンシスの分布域にあたり、アンナミカ本来の産地はもっと南のザライ(Gia Lai)省とされています。当店のページはこの整理より前の情報にもとづくもので、ページの記述が間違っていたというより、学界側の理解が後から前進したと考えるのが正確です。
2014 年には Nguyen(グエン)・Bui(ブイ)・Bogner(ボグナー)の 3 名が、ザライ省コンカキン国立公園で新たな自生地を確認し、生態や保全評価を含めて改めて報告しました。水上で育つと明るい緑の平らな葉、水中では濃緑〜褐色で葉面が盛り上がる(ブラート)姿になり、葉裏が紫色を帯びます。仏炎苞(ぶつえんほう=花を包む苞)は当店ページのとおり比較的小型で、外縁が黄色く内側が茶褐色になります。
いまの正式な学名: Cryptocoryne annamica Serebryanyi (1991) — キュー王立植物園の WCVP で ACCEPTED(正式名)。異名は登録されていません
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 1991 | Serebryanyi が Cryptocoryne annamica を独立種として記載(ベトナム産、Orlov 採集の株がもと) | Aqua Planta 16: 98–101(Aqua-Planta 3-91) |
| 1994 | Hertel & Mühlberg がダナン近郊バナ山地の個体群を Cryptocoryne vietnamensis として別種記載 | Aqua Planta 1994(2): 80 |
| 1994 以降 | 記載時に引用された古い標本(Clemens 4310)が実は C. vietnamensis と判明し、両種の産地の線引きが整理される(指摘の初出年・論文は特定できず) | 不明 |
| 2014 | Nguyen・Bui・Bogner がザライ省コンカキン国立公園で新産地を確認し、生態・保全評価を含めて再報告 | Gardens' Bull. Singapore 66(1): 67–72 |
| 2026 現在 | WCVP / POWO で Cryptocoryne annamica Serebryanyi が ACCEPTED。異名の登録はゼロ。分布はベトナム。C. vietnamensis も別の独立種として ACCEPTED | WCVP (Kew)/2026-08-04 参照 |
2026 年現在、Cryptocoryne annamica Serebryanyi は独立した正式な種として認められており、異名(別名)は 1 つも登録されていません。ただし産地の理解は変わっており、アンナミカ本来の分布はベトナム中部高原のザライ省、ダナン〜フエ周辺のものは 1994 年記載の Cryptocoryne vietnamensis として区別されます。当店ページの産地表記は、この整理が進む前の情報です。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園、2026-08-04 参照)/ The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営)/ Gardens' Bulletin Singapore 66(1) (2014)/ Aqua Planta 16 (1991)・1994(2)。