クリプトコリネ コンソブリナはインド ケーララ州 のカリカッタ付近で採集されたといわれているが未知のクリプト。
クリプトコリネ コンソブリナは、1857 年にオーストリアの植物学者 Schott(ショット)が記載した、インド南部の水草です。クリプトコリネの中でもとくに古い時期に名前がついた種のひとつですが、そのあとが長く、実物がほとんど確認できないまま 150 年近くが過ぎました。1860 年に Schott が別に記載したクリプトコリネ ウィッティ(Cryptocoryne wightii)も、のちに同じ植物とされ、現在はコンソブリナの異名(いめい=同じ植物につけられた別名)に整理されています。1936 年には図版つきの詳しい記載が追加され、姿の輪郭がようやく共有されるようになりました。
当店のページでは以前から「インド ケーララ州のカリカット付近で採集されたといわれているが、未知のクリプト」とご紹介してきました。これは 1981 年にカリカット近郊で採集された株が「コンソブリナではないか」と長く言われてきた経緯を踏まえたものです。その後の研究で、このカリカット産の株はコンソブリナとは別の種だったことが分かり、2004 年に Bogner(ボグナー)がクリプトコリネ シバダサニー(Cryptocoryne sivadasanii)という新種として記載しました。つまり当店の「未知のクリプト」という書き方は、当時としてはまったく正確な記述でした。
では本物のコンソブリナはどこにいたのか。2006 年、インド南部カルナータカ州の標高 1,000 m ほどの高地で再発見されました。水中の葉は波打って柔らかく、水上に出た葉は長さ 80 cm ほどまで伸びて硬くなるという、水中と水上でまったく姿が変わる性質(葉の dimorphism(ダイモルフィズム、二形性=同じ株が二通りの葉をつけること))をもちます。仏炎苞(ぶつえんほう=花を包む筒状の苞)は 15 cm ほどで、喉元にはっきりした襟があり、開いた舷部(げんぶ=仏炎苞の広がった部分)は黄色地に紫の斑点、内側の壺状の部分は濃い赤になります。
150 年ものあいだ「名前だけがある種」でしたので、現地の分布や個体差についてはまだ分かっていないことが多く残っています。ワイルド(現地採集)の株を扱う立場から見ても、コンソブリナはインドのクリプトコリネの中でもとくに情報の少ない種のひとつです。
いまの正式な学名: Cryptocoryne consobrina Schott (1857) — 現在も独立種として有効。異名に C. wightii Schott (1860)
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 1857 | Schott が Cryptocoryne consobrina を独立種として記載 (インド南部) | Bonplandia 5(14): 222 |
| 1860 | Schott が Cryptocoryne wightii を記載 (のちに consobrina の異名に整理される) | Prodr. Syst. Aroid.: 17 |
| 1936 | Schott & C.E.C.Fischer 名義で図版つきの詳しい記載が追加される | Hooker's Icon. Pl. 34: t. 3305 |
| 1981 | インド ケーララ州カリカット近郊で採集された株が「コンソブリナではないか」と考えられる | The Crypts pages (J.D. バスメイヤー)。原論文は特定できず |
| 2004 | ★ そのカリカット産の株が別種と判明し、Bogner が C. sivadasanii として記載 | Willdenowia 34(1): 195–201 |
| 2006 | ★ 本物の C. consobrina がカルナータカ州の標高約 1,000 m の高地で再発見される (採集者 Sunil) | The Crypts pages (J.D. バスメイヤー)。原報の誌名・巻頁は特定できず |
| 2026 現在 | POWO / WCVP で Cryptocoryne consobrina Schott が ACCEPTED。異名は C. wightii Schott | WCVP (Kew) 2026-06-04 版 |
2026 年現在、Cryptocoryne consobrina Schott は独立した種として正式に認められています(ACCEPTED)。長く「名前だけの種」でしたが、2006 年にインド カルナータカ州の高地で再発見されました。当店ページの「カリカット付近で採集されたといわれる未知のクリプト」という記述は、1981 年のカリカット産の株を指したもので、その株はのちに別種 C. sivadasanii であることが分かっています。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引、86674-1 / 86675-1)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園)2026-06-04 版 / The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営)/ Bonplandia 5 (1857) / Hooker's Icones Plantarum 34 (1936) / Willdenowia 34(1) (2004)。