クリプトコリネ ボグネリはスリランカ南西部から知られている。鋸状の葉縁は特徴的で色彩は深い緑。時折葉脈に銀緑が浮び質感のある草体だ。仏縁苞の鎌首も特徴的。
Cryptocoryne bogneri クリプトコリネ ボクネリ
クリプトコリネ ボグネリは、1975 年にチェコの植物学者 Rataj(ラタイ)が、クリプトコリネ属の総まとめとして著した論文のなかで記載した種です。産地はスリランカ南西部の熱帯雨林。種小名 bogneri は、サトイモ科の研究で知られる Josef Bogner(ヨーゼフ・ボグナー)氏への献名とされます。記載から 50 年、変種に落とされることも、他の種に統合されることもなく、独立した種のまま今日にいたっています。
ひとつ注意が要るのは、よく似た名前の別物が存在することです。2018 年、ボルネオ島サラワクで見つかった四倍体(よんばいたい=染色体を 4 組もつ型、2n = 44)の個体群が Cryptocoryne ciliata var. bogneri として記載されました。同じボグナー氏への献名ですが、種そのものが違います(片やスリランカのボグネリ、片やマングローブに生えるキリアータの変種)。学名は「属 + 種小名」の組み合わせではじめて意味を持つ、という原則がよく分かる例です。
生育場所はきわめて限られており、知られている自生地はごくわずか、そこに生える株数も多くありません。光の届かない暗い森のなかで、電気伝導度(でんきでんどうど=水に溶けている成分の量の目安)が 22 µS/cm ほどというきわめて貧栄養の水、pH は 5〜7 という環境に生えます。スリランカ産のクリプトコリネのなかでもっとも栽培が難しく、水槽向きではないとされ、同時に同国でもっとも絶滅が心配される種のひとつと見なされています。姿は、光沢のある円心形(えんしんけい=丸みを帯びたハート形)の葉で、縁が細かく波打って鋸歯(きょし=のこぎりの歯)のように見え、色は深い緑から褐色。ときに葉脈に銀緑色が浮かびます。仏炎苞(ぶつえんほう=花を包む苞)は筒が短く、襟(えり)を欠き、舷部(げんぶ=開いた面)はふちがいぼ状にざらつきながら前へ少し折れ曲がる——当店ページで「鎌首」と表現してきた、あの独特の姿です。色変わりの型は今のところ知られていません。
いまの正式な学名: Cryptocoryne bogneri Rataj (1975) — ACCEPTED、異名の登録はありません。名前のよく似た Cryptocoryne ciliata var. bogneri (2018、ボルネオ島サラワク産) は、まったく別の分類群です
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 1975 | Rataj が Cryptocoryne bogneri を独立種として記載 (スリランカ南西部産) | Stud. Ceskoslov. Akad. Ved 3 (Rev. Gen. Cryptocoryne): 100 |
| 2018 | 同じ献名をもつ Cryptocoryne ciliata var. bogneri (サラワク産、四倍体 2n=44) が記載される。本種とは別分類群 | Willdenowia 48: 429 (論文 425–431) |
| 2024 | スリランカ産の新種 C. srilankaensis が記載され、同国産全種の検索表 (見分けるための対照表) が更新される。bogneri は独立種のまま | Aroideana 47(3): 83–92 |
| 2026 現在 | POWO / WCVP で ACCEPTED。異名の登録なし | WCVP (Kew) 2026-08-04 確認 |
2026 年現在、Cryptocoryne bogneri Rataj は正式な学名として認められており、異名はひとつも登録されていません。1975 年の記載以来、分類上はまったく動いていない種です。混同が起きやすいのは学名ではなく「ボグネリ」という呼び名のほうで、2018 年に記載された Cryptocoryne ciliata var. bogneri(サラワク産)と取り違えないようご注意ください。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園)/ The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営)/ Willdenowia 48 (2018) / Aroideana 47(3) (2024)。