RVA レヨンベールアクア水草図鑑

クリプトコリネ キー Cryptocoryne keei

クリプトコリネ キーは

クリプトコリネ キーは、サラワク州の名高い採集家 Henry Ong Kee Chuan(ヘンリー・オン・キーチュアン)氏が 1978 年ごろ、クチン西方のバウ(Bau)近郊で見つけた水草です。ただし発見当初は新種とは思われていませんでした。ヨーロッパの栽培家のあいだでは、この植物は長年きわめて珍しい C. bullosa(ブローサ)だと信じられており、しかも当時は仏炎苞(ぶつえんほう=花を包む苞)が知られていなかったため、確かめるすべもなかったのです。

決着をつけたのは染色体(せんしょくたい=細胞の中にある遺伝情報の束)でした。1982 年、Arends・Bastmeijer・Jacobsen の 3 氏がクリプトコリネ 38 種の染色体数を調べた研究のなかで、この植物は 2n = 20、ブローサは 2n = 34 と判明。見た目がどれほど似ていても別種であることがはっきりし、同じ論文のなかで N. Jacobsen が Cryptocoryne keei として正式に記載しました(Nordic Journal of Botany 2 巻 5 号 454 頁)。種名の keei は、発見者 Ong 氏の名「Kee」にちなみます。同じ 1982 年の研究からは C. amicorum も新種として生まれています。

記載の時点でもまだ花は未知のままでした。のちに Ong 氏が仏炎苞を採集し、さらにベルリンの Hans Ehrenberg(ハンス・エーレンベルク)氏が長年の試行の末に栽培下で初めて開花させたことで、ようやく全体像がそろいます。1985 年、Jacobsen がボルネオ島のクリプトコリネを総整理した論文でも、キーは独立した種として扱われました。1982 年の記載から今日まで、この学名は一度も別名に置き換えられていません。

姿は、長さ 5〜8 cm ほどの小ぶりな仏炎苞で、先端の尾がねじれて立ち上がります。舷部(げんぶ)の表面はざらつき、喉元には細かい赤点が散ります。葉は濃い緑で葉身は 10 cm ほど、水中葉では明るい褐色の斑が出ることがあります。クチン西方の川岸で、水中でも水上でも育ちます。当店のページには、バウのスンガイシバヤン(カンポンソゴ)産 M-BASS を 2001 年ごろから、スンガイマンディ産 M-BASS1・M-BASS2 を 2002 年 8 月に、さらに 2002 年 10 月 28 日のバウ現地画像を残しており、産地ごとの違いをそのまま並べて見ていただけます。


📜 分類の歩み — この名前はいつ、どう変わったか

いまの正式な学名: Cryptocoryne keei N.Jacobsen (1982) — POWO / WCVP で ACCEPTED (正式に認められた学名)。異名の登録はありません

できごと文献
1978 ごろサラワクの採集家 Henry Ong Kee Chuan 氏がバウ (Bau) 近郊で本種を発見The Crypts pages (J.D. Bastmeijer) / Jacobsen 1985
発見当時ヨーロッパの栽培家はこの植物を希少種 C. bullosa と混同していた (仏炎苞が未知で確かめられなかった)The Crypts pages (J.D. Bastmeijer)
1982Arends・Bastmeijer・Jacobsen が染色体数を報告 (keei 2n=20 / bullosa 2n=34)。同じ論文で N. Jacobsen が C. keei を新種として記載Nordic J. Bot. 2(5): 453–463 (記載は 454 頁)
記載後Ong 氏が仏炎苞を採集。ベルリンの Hans Ehrenberg 氏が長年の試行の末、栽培下で初めて開花させるThe Crypts pages (J.D. Bastmeijer)
1985Jacobsen のボルネオ産クリプトコリネ整理で独立種として扱われるNordic J. Bot. 5(1): 31–50
2026 現在POWO / WCVP で C. keei N.Jacobsen が ACCEPTED。異名の登録なしWCVP (Kew) 2026-08-04 確認

2026 年現在、Cryptocoryne keei N.Jacobsen は POWO / WCVP で正式に認められた学名 (ACCEPTED) です。異名は 1 つも登録されておらず、1982 年の記載から今日までまったく揺らいでいません。C. bullosa と混同されていた時期がありましたが、染色体数 (keei 2n=20 / bullosa 2n=34) で完全に区別されています。

※ 出典: IPNI(国際植物名索引)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園、2026-08-04 確認)/ The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営)/ Nordic Journal of Botany 2(5) (1982, Arends・Bastmeijer・Jacobsen)・5(1) (1985, Jacobsen)。

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