ゾナータはコルダータグループのクリプトコリネで黄色のリムが美しい。
Cryptocoryne cordata var. zonata クリプトコリネ ゾナータクリプトコリネ ゾナータは、1970 年にオランダの植物学者 de Wit(デ・ウィット)が独立した種として記載した水草です。1985 年に Jacobsen(ヤコブセン)がボルネオ島のクリプトコリネを整理したときにも、ゾナータは独立した種として扱われていました。当店が最初の株を入荷し、カリマンタンやサラワクの各産地から集めていた当時、この「ゾナータ」という名前は学術的にも正式な種名でした。
その後、コルダータの仲間をまとめて見直す研究が進みます。2002 年、ヤコブセンはゾナータをコルダータの変種に位置づけ直しました。さらに研究が進むなかで、ゾナータは 1898 年に Engler(エングラー)がすでに記載していたグラボウスキーと同じものと判断されます。学名は先に発表されたほうが優先される決まり(先取権)ですので、1898 年のグラボウスキーが残り、1970 年のゾナータが異名(いめい=同じ植物につけられた別名)になった、という流れです。植物そのものが別物になったわけではありません。
形のうえでは、手のひらほどの大きさになる緑色の心形(しんけい=ハート形)の葉をつけ、産地によっては葉面が強く盛り上がるブラートタイプもあります。仏炎苞(ぶつえんほう=花を包む苞)は 20 cm を超えることもあり、喉元は黄色で赤い斑点が入り、開いた舷部(げんぶ)の色は鮮やかな黄色から濃い赤まで大きく変わります。ボルネオ島だけに分布し、泥炭湿地(でいたんしっち=植物が分解しきらずに積もった酸性の湿地)の水中で育つのがふつうです。当店がカリマンタン中部のカソンガン(カティンガン)、タミヤンラヤン、パンカランブンのスンガイキャンディ、そしてサラワク州の各河川で見てきた個体差の大きさは、この種そのものがもつ幅の広さを物語っています。
いまの正式な学名: Cryptocoryne grabowskii Engl. (1898) — 旧名 C. zonata de Wit (1970)。アクアリウムでは「ゾナータ」の名で親しまれています
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 1898 | Engler が Cryptocoryne grabowskii を独立種として記載 | Bot. Jahrb. Syst. 25(1-2): 28 |
| 1970 | de Wit が Cryptocoryne zonata を独立種として記載 | Meded. Bot. Tuinen Belmonte Arbor. Wageningen 13: 280 |
| 1985 | Jacobsen がボルネオ産 14 種を整理。この時点では zonata と grabowskii は別々の独立種 | Nordic J. Bot. 5(1): 31–50 |
| 2002 | Jacobsen が cordata 複合体を再編。zonata を変種 C. cordata var. zonata へ降格 (grabowskii も同時に変種へ) | Aqua Planta 27(4): 150–151 |
| 2002〜2017 | var. zonata が var. grabowskii に吸収される (正確な公表年・論文は特定できず) | 不明 |
| 2017 | ★「C. zonata は現在 C. cordata var. grabowskii に含める」と明文化 | Willdenowia 47(3): 325–339 |
| 2023 | ★ 染色体数を根拠に再編。2n=68 の C. grabowskii が独立種へ復帰 | Aroideana 46(3): 1–23 |
| 2026 現在 | POWO / WCVP で C. grabowskii が ACCEPTED。異名は C. zonata de Wit / C. grandis Ridl. / C. striolata var. cordifolia Ridl. の 3 つ | WCVP (Kew) 2026-06-10 版 |
2026 年現在、Cryptocoryne zonata de Wit は正式な学名としては使われず、Cryptocoryne grabowskii Engl. の異名になっています。ただし「ゾナータ」は 1970〜2002 年の約 30 年間、まぎれもなく正式な種名でした。アクアリウムでは「ゾナータ」の名で親しまれています。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園)/ The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営)/ Willdenowia 47(3) (2017) / Aroideana 46(3) (2023)。