クリプトコリネ ビローサはスマトラ島中央部に分布する
クリプトコリネ ビローサは、スマトラ島中央部にごく狭く分布する種です。1979 年に S. Jähn(イェーン)氏が現地で採集し、翌 1980 年、デンマークの Niels Jacobsen(ニルス・ヤコブセン)氏がアメリカのサトイモ科専門誌『Aroideana』で新種として記載しました(3 巻 4 号 118〜119 頁、論文名は「A new species of Cryptocoryne from Sumatra」)。当店ページの「スマトラ島中央部に分布する」という記述は、現在の整理と一致しています。
この種を一目で見分けさせるのが、仏炎苞(ぶつえんほう=花を包む苞)の姿です。開いた面(舷部=げんぶ)が紫色の毛でびっしり覆われ、喉元は黄色地に赤い斑点が入ります。この毛はクリプトコリネ属のなかでもきわめて特異で、種小名の villosa が「軟毛におおわれた」という意味のラテン語であることとよく合っています。この特徴があるおかげで、記載から今日まで一度も別名に置き換えられたことがありません。異名(別名)の登録はゼロです。
その後の記録は多くありません。1985 年に Jacobsen 氏と Josef Bogner(ヨーゼフ・ボグナー)氏が現地で再採集し、2004 年にはインドネシアの Suwidji Wongso(スウィジ・ウォンソ)氏が改めて採集しています。分布域が非常に狭いため、The Crypts pages では「きわめて希少で、絶滅が心配される種かもしれない」と記されています。染色体数(せんしょくたい=細胞の中にある遺伝情報の束)は、今回参照した公開資料では確認できませんでした。
いまの正式な学名: Cryptocoryne villosa N.Jacobsen (1980) — POWO / WCVP で ACCEPTED (正式に認められた学名)。異名の登録はありません
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 1979 | S. Jähn がスマトラ島中央部で本種を初めて採集 | The Crypts pages (J.D. Bastmeijer) |
| 1980 | N. Jacobsen が Cryptocoryne villosa として新種記載 (論文「A new species of Cryptocoryne from Sumatra」) | Aroideana 3(4): 118–119 / IPNI |
| 1985 | Jacobsen と Bogner が現地で再採集 | The Crypts pages (J.D. Bastmeijer) |
| 2004 | Suwidji Wongso が改めて採集 | The Crypts pages (J.D. Bastmeijer) |
| 年不明 | 染色体数 (2n) の報告は今回参照した公開資料では確認できず | 不明 |
| 2026 現在 | POWO / WCVP で C. villosa N.Jacobsen が ACCEPTED。異名の登録なし。分布はスマトラ島 | WCVP (Kew) 2026-08-04 確認 |
2026 年現在、Cryptocoryne villosa N.Jacobsen は POWO / WCVP で正式に認められた学名 (ACCEPTED) です。異名は 1 つも登録されておらず、1980 年の記載から今日まで揺らいでいません。紫色の毛でおおわれた仏炎苞という他に例のない特徴があるため、他種と取り違えられたことがない、珍しく素直な歴史をもつ種です。分布域はスマトラ島中央部の狭い範囲に限られます。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園、2026-08-04 確認)/ The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営、cryptocoryneworld.org)/ Aroideana 3(4) (1980, N. Jacobsen)。