クリプトコリネ ノリトイは本文準備中
クリプトコリネ ノリトイは、2005 年にインドネシアの Wongso(ウォンソ)氏がドイツの専門誌『Aqua-Planta』30 巻 3 号(92〜100 ページ)で発表した、比較的新しい種です。産地はボルネオ島インドネシア領の東部、東カリマンタン。ボルネオ島のクリプトコリネは西部・南部からの記録がほとんどで、東部や北部からはめったに見つかりません。その意味で、この種はまず見つかったこと自体が出来事でした。当店の図鑑ページはまだ本文準備中です。
生えている環境も、この仲間としては変わっています。侵食された石灰岩の一帯で、湧き水や地下水路がいくつも走る場所です。クリプトコリネの多くは酸性の泥炭湿地(でいたんしっち=植物が分解しきらずに積もった湿地)を好みますから、石灰岩=アルカリ寄りという環境は例外的といえます。分布はきわめて狭く、いまのところ互いにごく近い 3 か所からしか知られていません。こうした種を狭域固有種(きょういきこゆうしゅ=ごく限られた場所にしかいない種)と呼びます。
見た目はスマトラ島西部の C. moehlmannii(モエルマニー)によく似ています。区別の決め手になるのは仏炎苞(ぶつえんほう=花を包む苞)の細部と葉の特徴、そして染色体数(さいしょくたいすう=細胞のなかの染色体の本数)で、ノリトイは 2n=34、モエルマニーは 2n=30 と数が違います。数が違うということは、外見が似ていても別の種として扱う十分な根拠になります。記載から 20 年あまり、学名は一度も変わっておらず、2026 年現在も異名(いめい=同じ植物につけられた別名)は 1 つも登録されていません。歩みが短い分だけ、まだ書けることが少ない種でもあります。
いまの正式な学名: Cryptocoryne noritoi Wongso (2005) — 現在も有効な独立種。異名の登録はゼロ
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 2005 | ★ Wongso が東カリマンタン産を Cryptocoryne noritoi として記載。染色体数 2n=34、石灰岩地帯の湧水域に生育 | Aqua-Planta 30(3): 92–100 |
| 2005〜2026 | 学名の変更・降格・統合はなし。互いにごく近い 3 か所のみから知られる狭域固有種として扱われる | The Crypts pages |
| 2026 現在 | POWO / WCVP で C. noritoi Wongso が ACCEPTED (有効な独立種)。異名の登録はゼロ | WCVP (Kew) 2026-06-04 版 (原記載を Aqua Pl. 30: 92 (2005) と記録) |
2026 年現在、Cryptocoryne noritoi Wongso は独立した種として有効です。キュー王立植物園の WCVP でも ACCEPTED(有効な学名)とされ、異名は 1 つも登録されていません。2005 年の記載以来まったく揺れていない名前ですが、それは分類が固まりきったからというより、研究の材料になる産地株そのものが少ないためでもあります。今後の調査で位置づけが動く余地は残っています。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引)/ WCVP(キュー王立植物園、2026-06-04 版)/ The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営)/ Aqua-Planta 30(3): 92–100 (2005)。