クリプトコリネ ズカリーは本文準備中
クリプトコリネ ズカリーは、1974 年にチェコの Karel Rataj(カレル・ラタイ)氏が記載した水草です(Folia Geobotanica et Phytotaxonomica 9 巻 3 号 313 頁)。ところがこの記載はごく簡素で、しかも正確な原産地が分かっていません。The Crypts pages によれば、1970 年代にシンガポールの Y.W. Ong(オン)氏が輸出した株が出回ったもので、1999 年に Ong 氏本人から聞き取った話でも「西マレーシアのどこかで、地元の採集人が採ったもの」という以上のことは分からなかったといいます。その後、野生で採り直された記録もありません。
そのため評価は割れました。de Wit(デ・ウィット)氏は 1990 年、記載が乏しいことを理由に独立した種として認めませんでした。一方 Jacobsen(ヤコブセン)氏と Bogner(ボグナー)氏は 1987 年に、C. jacobsenii(ヤコブセニー)と近い関係にあると指摘しています。花が咲いていない状態では C. cordata(コルダータ)とほとんど見分けがつかず、それも評価が定まらなかった一因でした。
今日では交雑種として扱われています。2019 年、W. Reichert(ライヒェルト)氏がスマトラ島産のクリプトコリネを整理した論文で、四倍体(しばいたい=染色体を 4 組もつ、2n=68)の自然交雑種 C. ×zukalii nothovar. sumateraensis を記載しました(Taiwania 64 巻 3 号 334 頁)。親の一方は C. cordata var. diderici(コルダータ ディデリキ)です。同じ論文では、こうした自然交雑種は不稔(ふねん=種子ができない)で、株分けによって大きな群落をつくると報告されています。この変種はのちに Jacobsen 氏によって独立の交雑種 C. ×sumateraensis へ格上げされました(Aroideana 46 巻 3 号 14 頁、2023 年)。なお POWO・WCVP は C. ×zukalii 自体の交雑の組合せを C. cordata × C. minima としています。ただし、「独立種」から「交雑種」へ扱いが変わった正確な年と論文は特定できませんでした(不明)。
姿は、開いた舷部(げんぶ=仏炎苞の広がった部分)が筒に対してほぼ直角に張り出し、色は黄褐色。喉元は細くすぼまりますが、はっきりした襟(カラー)はつくりません。葉は付け根が切ったような形(切形)から浅いハート形で、表面がわずかに凹凸に盛り上がる(ブラート)ことがあり、裏面が赤みを帯びる個体もあります。丈夫で育てやすい部類に入りますが、水槽で見かける機会はけっして多くありません。
いまの正式な学名: Cryptocoryne ×zukalii Rataj (1974) — WCVP (キュー王立植物園) で ACCEPTED。ただし独立した種ではなく、学名に「×」の付く自然交雑種 (しぜんこうざつしゅ=野生で生まれた雑種) として扱われます
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 1974 | K. Rataj が Cryptocoryne zukalii を新種として記載。記載は簡素で、原産地が不詳のまま | Folia Geobot. Phytotax. 9(3): 313 |
| 1970 年代 | シンガポールの Y.W. Ong 氏が輸出した株として流通。Ong 氏の証言 (1999 年聞き取り) では「西マレーシアのどこかで地元の採集人が採集」。以後 野生での再採集の記録なし | The Crypts pages (J.D. Bastmeijer) |
| 1987 | Jacobsen & Bogner が C. jacobsenii と近縁であると指摘 | The Crypts pages (Jacobsen & Bogner 1987 を引用) |
| 1990 | de Wit は記載が乏しいことを理由に独立種として認めず | The Crypts pages (de Wit 1990 を引用) |
| 年不明 | 独立種から「×」付きの自然交雑種としての扱いへ変わる。正確な公表年・論文は特定できず | 不明 |
| 2019 | W. Reichert がスマトラ産の四倍体自然交雑種 C. ×zukalii nothovar. sumateraensis を記載 (2n=68、親の一方は C. cordata var. diderici、不稔で株分け繁殖) | Taiwania 64(3): 326–338 (記載は 334 頁) |
| 2023 | N. Jacobsen が nothovar. sumateraensis を独立の交雑種 C. ×sumateraensis (W.Reichert) N.Jacobsen へ格上げ | Aroideana 46(3): 14 |
| 2026 現在 | WCVP で C. ×zukalii Rataj が自然交雑種として ACCEPTED。POWO は交雑の組合せを C. cordata × C. minima とする | WCVP (Kew) 2026-06-04 版、GBIF 経由 2026-08-04 確認 / POWO (Kew) |
2026 年現在、Cryptocoryne ×zukalii Rataj は WCVP (キュー王立植物園) で認められた名前 (ACCEPTED) ですが、独立した種ではなく「×」の付く自然交雑種として扱われています。POWO は交雑の組合せを C. cordata × C. minima としています。1974 年の記載以来、原産地は「西マレーシアのどこか」としか分かっておらず、野生での再採集も確認されていません。独立種から交雑種へ扱いが変わった正確な年と論文は特定できず、不明としています。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引、2026-08-04 確認)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園 2026-06-04 版、GBIF 経由で確認)/ The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営、cryptocoryneworld.org)/ Folia Geobotanica et Phytotaxonomica 9(3) (1974, Rataj)/ Taiwania 64(3) (2019, W. Reichert)/ Aroideana 46(3) (2023, N. Jacobsen)。