クリプトコリネ フラキシディフォリアは本文準備中
クリプトコリネ フラキシディフォリアは、1991 年に Jacobsen(ヤコブセン)が Aqua Planta 1991 年 1 号 26 頁で記載した水草です。ここで大事なのは記載された階級(かいきゅう=種・変種などの位置づけ)で、独立した種ではなく Cryptocoryne crispatula(クリスパチュラ。1920 年に Engler が記載)の変種として発表されました。IPNI(アイピーエヌアイ=国際植物名索引。学名の発表を記録している公式データベース)を調べても「Cryptocoryne flaccidifolia」という種の階級の名前は登録がありません。つまり水草の世界で使われている「フラキシディフォリア」は、変種名だけを取り出した短縮形です。学術的に正確に書くなら Cryptocoryne crispatula var. flaccidifolia となります。
産地はタイの半島部(マレー半島側)だけで、クロンソック、カポン、タムナンといった地域から知られています。流れのゆるやかな浅い川に生え、乾季でも滝と滝のあいだは水位が比較的安定しているため、岸が干上がるような時期も持ちこたえます。葉は細長く柔らかで、なめらか、あるいはわずかに波打つ程度。水中でよく育つタイプです。
クリスパチュラの仲間は変種が多く、見分けが難しいことで知られます。よく似た var. balansae(バランサエ)との違いは、ほぼ葉の幅の程度しかなく、自然のばらつきと重なってしまいます。2015 年、Willdenowia(ヴィルデノヴィア)45 巻 2 号 177〜182 頁の論文で、AFLP(エーエフエルピー=DNA を細かく切った断片のパターンを比べて近縁関係を調べる手法)による整理が行われました。その結果、タイ半島部の var. flaccidifolia は、東タイのカオヤイやウボンラチャタニの株とも、ベトナム・中国国境の var. tonkinensis とも近縁ではないと示され、それまで var. flaccidifolia と呼ばれていた中国産の株は var. tonkinensis のほうへ整理し直されました。
逆に、アクアリウムで別の名前で流通していたものの多くが、実際にはこの変種だったとも指摘されています。名前のゆれが大きい仲間ですので、産地の記録がある株を選ぶことに意味があります。染色体数(せんしょくたいすう=細胞の中の染色体の本数)については、本変種の公表値を確認できませんでしたので、ここでは「不明」としておきます。
いまの正式な学名: Cryptocoryne crispatula var. flaccidifolia N.Jacobsen (1991) — 正式にはクリスパチュラの変種です。「Cryptocoryne flaccidifolia」という種の階級の学名は発表されておらず、水草の世界での短い呼び名です。POWO / WCVP では変種として ACCEPTED (有効)
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 1920 | 親となる種 Cryptocoryne crispatula をエングラーが記載 | Pflanzenr., Arac.-Aroid. & Pistioid.: 247 (IPNI 86678-1) |
| 1991 | ヤコブセンが変種 C. crispatula var. flaccidifolia として記載。産地はタイ半島部 | Aqua Planta 1991(1): 26 (IPNI 965102-1) |
| 2015 | AFLP 解析でクリスパチュラの変種を整理。中国産の「var. flaccidifolia」は var. tonkinensis へ移され、タイ半島部の本変種は独立性を保つ | Willdenowia 45(2): 177–182 |
| 現在まで | 種の階級の学名「Cryptocoryne flaccidifolia」は発表されていない (IPNI に登録なし) | IPNI 検索結果 2026-08-04 |
| 現在まで | 本変種の染色体数の公表値を確認できず | 不明 |
| 2026 現在 | POWO / WCVP で Cryptocoryne crispatula var. flaccidifolia N.Jacobsen が ACCEPTED | WCVP (Kew) 2026-08-04 参照 |
2026 年現在の正式な学名は Cryptocoryne crispatula var. flaccidifolia N.Jacobsen です。種の階級の「Cryptocoryne flaccidifolia」という学名は発表されたことがなく、水草の世界での短い呼び名にあたります。アクアリウムでは「フラキシディフォリア」の名で親しまれています。染色体数は公表値を確認できず、不明のままです。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引、レコード 965102-1 / 86678-1)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園、2026-08-04 参照)/ The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営)/ Aqua Planta 1991(1): 26 / Willdenowia 45(2): 177–182 (2015)。