クリプトコリネ ヤコブセニーは本文準備中
クリプトコリネ ヤコブセニーは、1976 年にオランダの植物学者 de Wit(デ・ウィット)が、オランダのアクアリウム誌『Het Aquarium』46 巻 7 号 177 頁で新種として発表した水草です。種名の jacobsenii は、デンマークのクリプトコリネ研究者 Niels Jacobsen(ニールス・ヤコブセン)教授への献名(けんめい=人の名をとって付けた学名)。ヤコブセン教授はクリプトコリネの分類にきわめて多くの貢献をした人物で、この属の学名にはたびたびその名が登場します。
ところがこの種は、名前こそ 1976 年から一度も変わっていないのに、「その名前が実際にはどの植物を指すのか」がいまだにはっきりしない、いわば“難しい種”です。もとになった株は 1970 年代にヨーロッパへ持ち込まれたもので、産地は「マレー半島/スマトラ」と伝えられただけ。The Crypts pages も「分布が分かっていない」「異なるいくつかの形が本種として扱われている」と率直に書いており、解決にはさらなる研究が必要だとしています。POWO では分布はスマトラとされています。ヨーロッパでは栽培株がすでに残っていないとも記されており、実物にあたって確かめること自体が難しい状態です。
記録されている姿は、水上葉で葉身が長さ 5 cm・幅 2 cm ほどの小型種。葉の表は濃緑で大理石のような斑(まだら)が入り、裏は淡い緑から赤みを帯びます。仏炎苞(ぶつえんほう=花を包む苞)の開いた舷部(げんぶ)は突起が目立ってざらつきが強く、はっきりした襟(カラー)を持ち、喉元は赤〜黄色で細かい赤斑が散ります。染色体数(せんしょくたい=細胞の中にある遺伝情報の束の数)は、今回参照した資料では具体的な数値を確認できませんでした。
まとめると、ヤコブセニーは「学名としては 50 年間ゆらいでいないのに、指し示す実体のほうが未確定」という、クリプトコリネらしい宿題を残した種です。今後この名前の中身が整理されれば、産地や範囲が書き換わる可能性があります。
いまの正式な学名: Cryptocoryne jacobsenii de Wit (1976) — POWO / WCVP で ACCEPTED (正式に認められた学名)。異名の登録はありません
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 1970 年代 | 産地を「マレー半島/スマトラ」と伝えられた株がヨーロッパへ持ち込まれる (産地は未確定) | The Crypts pages (J.D. Bastmeijer) |
| 1976 | de Wit が Cryptocoryne jacobsenii を新種として記載。デンマークの Niels Jacobsen 教授への献名 | Het Aquarium 46(7): 177 (IPNI 表記 Aquarium (Netherlands) 46(7): 177) |
| 1977・1982 | Jacobsen および Arends・Bastmeijer・Jacobsen の染色体研究で本種にも言及があるが、具体的な染色体数は今回確認できず | Nordic J. Bot. 2: 453–463 / Jacobsen 1977 (詳細不明) |
| 年不明 | 本種とされる複数の異なる形が現れ、どれが本当の C. jacobsenii かは未解決のまま | 不明 |
| 2026 現在 | POWO / WCVP で C. jacobsenii de Wit が ACCEPTED、分布はスマトラ。異名の登録なし | WCVP (Kew) 2026-08-04 確認 |
2026 年現在、Cryptocoryne jacobsenii de Wit は POWO / WCVP で正式に認められた学名 (ACCEPTED) で、異名の登録はありません。ただし「この学名がどの植物を指すのか」という中身のほうは未解決で、産地・分布ともに確定していません。名前は安定、実体は宿題 — というのが本種の現状です。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園、2026-08-04 確認)/ The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営)/ Het Aquarium 46(7) (1976) / Nordic Journal of Botany 2 (1982)。