Cryptocoryne uenoi Y. Sasaki, 2002 — レヨンベール発の新種
クリプトコリネ ウエノイは、ボルネオ島サラワク州スリアマン産の新種です。東南アジアの冒険家でもある上野氏がサラワクで見つけてサンプリングし、当店主・佐々木勇二のもとへ送ってくれたもので、種名は発見者の上野氏に献名されています。ダークグリーンタイプとグリーン虎斑タイプが知られています。
記載は 2002 年、当店主・佐々木勇二が開花株をもとに行いました。原記載はドイツの水草専門誌 Aqua Planta 27 巻 4 号 147〜149 頁(2002 年)で、記載の基準となるタイプ標本はオランダのライデン植物標本館(L)に収められています。同じ号には C. yujii の記載(145〜146 頁)も掲載されており、当時のサラワク調査の成果がまとまって発表された号でした。
葉は披針形(ひしんけい=細長く先のとがった形)の長葉で、大きさは最大で約 12 × 4 cm。先端は鋭くとがり、基部は心形(ハート形)です。葉の表面は不規則にぼこぼこと盛り上がる凹凸葉(ブラート)になり、色は斑(ふ)の入る緑色から褐色まで幅広く変異します。主脈が淡いクリーム色を帯びることもあり、当店が扱ってきたダークグリーンタイプとグリーン虎斑タイプは、この葉色の変異にあたります。
仏炎苞(ぶつえんほう=花を包む苞)は長さ 5〜7 cm と細長く、舷部(げんぶ=仏炎苞の開いた面)の縁がぎざぎざの鋸歯状(きょしじょう)になるのが最大の特徴です。襟(えり=舷部と喉の境にできる輪状の張り出し)はほとんど目立たず、花筒の下部にある壺状のふくらみ(ケトル=雌花の入る部屋)は内側が白色、雄花の部分は褐色の輪になります。水中葉が近縁の C. keei や C. bullosa によく似るため長く見過ごされてきましたが、C. keei は舷部が黄色みを帯び喉に紫の斑点が入り、染色体数(細胞内の染色体の本数)が 2n = 20 である点で区別できます。ウエノイ自身の染色体数は、現在もまだ数えられていません。
以前より、上野氏が水位の低いときにこのクリプトをサンプリングして送ってくれていましたが、当初はブローサ(C. bullosa)ではないかと判断していました。ところが開花株を発見して驚きました——このクリプトは新種だったのです。水中葉は一見ブローサの地域変種に見えますが、水上葉は美しく変身し、花のタイプもこれまでのものに該当しない新タイプでした。サラワクでは 1800 年代から多くの研究家が頻繁に調査しており、ヨーロッパの専門筋では新種の出る見込みは薄いとされていましたが、佐々木の調査でサラワクから 2 種、ボルネオ全土で 3 種の新種を確認することができました。
クリプトコリネ ウエノイは、ボルネオ島サラワク州スリアマン(Sri Aman、旧シマンガン)の南西で見つかった新種です。発端は上野氏。The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営)によれば、上野氏は 2001 年の時点ですでにこの植物に出会っていましたが、そのときは新種とは気づかれていません。水中葉が近縁の C. keei(キー)や C. bullosa(ブローサ)とよく似ていたためで、当店でも当初はブローサの地域変種だと判断していました。決め手になったのはその年の異例の渇水です。水位がふだんより大きく下がったことで開花株が姿を現し、はじめて花のかたちを確かめられるようになりました。サラワクは 1800 年代から研究者が繰り返し歩いた土地で、ヨーロッパの専門筋では新種はもう出ないと見られていた場所でした。
記載は 2002 年、当店主・佐々木勇二が開花株をもとに行いました。原記載はドイツの水草専門誌 Aqua Planta 27 巻 4 号 147〜149 頁(2002 年)、表題は「Cryptocoryne uenoi Y. Sasaki (Araceae), eine neue Art aus Sarawak(サラワク産の新種)」です。学名の基準となるタイプ標本(=その名前の物差しになる押し葉標本)はオランダのライデン植物標本館(L)に収められました。種小名の uenoi は発見者の上野氏への献名です。同じ号には C. yujii(ユウジィ)の記載も 145〜146 頁に載っており、当時のサラワク調査の成果がまとまって発表された号でした。
見分けの手がかりは花にあります。仏炎苞(ぶつえんほう=花を包む苞)の舷部(げんぶ=仏炎苞の開いた面)の縁がぎざぎざの鋸歯状(きょしじょう)になり、襟(えり=舷部と喉の境にできる輪状の張り出し)はほとんど目立ちません。花筒の下部にある壺状のふくらみ(ケトル=雌花の入る部屋)は内側が白く、雄花の部分は褐色の輪になります。葉は最大で約 12 × 4 cm、先端はとがり、基部は心形(ハート形)で、表面の凹凸は不規則。色は斑(ふ)の入る緑から褐色まで幅があり、主脈が淡いクリーム色を帯びることもあります。よく似た C. keei は舷部が黄色みを帯びて喉に紫の斑点が入り、染色体数(細胞の中にある遺伝情報の束の本数)が 2n = 20 である点で区別できます。
ウエノイ自身の染色体数はいまも数えられていません。栽培が難しく、染色体を調べられるだけの生きた材料がそろっていないためです。記載から 20 年以上を経た 2026 年現在も、POWO / WCVP でこの学名は正式に認められたまま(ACCEPTED)で、異名は 1 つも登録されていません。当店ページにはダークグリーンタイプとグリーン虎斑タイプ、そしてスリアマンの自生地・水上葉・花・群落・仏炎苞の画像を掲載しており、記載当時の姿をそのまま見ていただけます。
※ 学名・記載情報の出典: IPNI(国際植物名索引)/ キュー王立植物園 Plants of the World Online / The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営)。原記載は Aqua Planta 27(4): 147–149 (2002)。
いまの正式な学名: Cryptocoryne uenoi Y.Sasaki (2002) — POWO / WCVP で ACCEPTED (正式に認められた学名)。異名の登録はありません
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 2001 | 上野氏がサラワクでこの植物に出会うが、C. keei / C. bullosa に似ていたため新種と気づかれず | The Crypts pages・cryptocoryneworld.org (J.D. Bastmeijer) |
| 当初の判断 | 当店でもブローサ (C. bullosa) の地域変種と判断していた | 当店ページ「発見のエピソード — サラワク調査記より」 |
| 2002 | 異例の渇水で水位が下がり開花株を発見。当店主・佐々木勇二がスリアマン南西で採集 | The Crypts pages (J.D. Bastmeijer) / 当店ページ |
| 2002 | 佐々木勇二が Cryptocoryne uenoi として新種記載。タイプ標本はライデン植物標本館 (L) | Aqua Planta 27(4): 147–149 (2002) / IPNI |
| 2002 (同号) | 同じ号に C. yujii の記載 (145–146 頁) も掲載 | Aqua Planta 27(4) (2002) |
| 染色体数 | 不明。栽培が難しく、いまだ数えられていない (近縁の C. keei は 2n = 20) | The Crypts pages (J.D. Bastmeijer) |
| 2026 現在 | POWO / WCVP で C. uenoi Y.Sasaki が ACCEPTED。異名の登録なし | WCVP (Kew) 2026-08-04 確認 |
2026 年現在、Cryptocoryne uenoi Y.Sasaki は POWO / WCVP で正式に認められた学名 (ACCEPTED) です。異名は 1 つも登録されておらず、2002 年の記載から今日まで揺らいでいません。染色体数だけは栽培の難しさから現在も未計測のままです。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園、2026-08-04 確認)/ The Crypts pages・cryptocoryneworld.org(J.D. バスメイヤー氏 運営)/ 原記載 Aqua Planta 27(4): 147–149 (2002, Y. Sasaki)。