クリプトコリネ ウエンディティはスリランカに分布する。
Cryptocoryne
wendtii クリプトコリネ ウエンディティクリプトコリネ ウエンディティは、スリランカ中部(キャンディ周辺)に分布する種で、水草のなかでもっとも広く普及したクリプトコリネです。オランダの Hendrik C.D. de Wit(ヘンドリック・デ・ウィット)が 1958 年、ワーヘニンゲンの植物園紀要で記載しました(第 2 巻 4 号 97〜101 頁、学名は 100 頁)。種小名の wendtii は、ドイツの水草愛好家 Albert Wendt(アルベルト・ウェント、1887〜1958)への献名です。ウェント氏は『Aquarienpflanzen in Wort und Bild』という有名な差し替え式の水草図譜をまとめた人で、記載と同じ年に亡くなりました。
この種の最大の特徴は、変異の幅がとにかく広いことです。The Crypts pages は「多くの型が存在するだけでなく、同じ株でも環境によって姿が変わってしまう」と書いています。この性質が名前を増やす原因になりました。1975 年、Rataj(ラタイ)は var. jahnelii・var. krauteri・var. nana・var. rubella の 4 変種を立てましたが、2026 年現在、この 4 つはすべて C. wendtii の異名(別名)として整理されています。正式名として残っているのは Cryptocoryne wendtii de Wit ただ 1 つです。
いま流通している「トロピカ」「ミオヤ(レッド)」「グリーンゲッコウ」「ブラウン」「リアルグリーン」といった名前は、いずれも栽培品種名(トレードネーム=業者や生産者が付けた流通上の呼び名)であって、植物学の正式な学名ではありません。ただし中身がないわけではなく、たとえば「ミオヤ」はスリランカの川の名(産地名)に由来し、産地がはっきり分かっている数少ない型です。当店の図鑑にも、トロピカ(2003 年 3 月)、ミオヤのレッド(2002 年 12 月)、グリーンゲッコウ(2006 年 3 月)、ブラウン(2002 年 2 月)、ナウラ産(2002 年 1 月)、スリランカ産(2001 年 12 月)、水上株(2003 年 12 月)と、撮影日つきで型ごとのページが並んでいます。同じ種でここまで姿が違う、というのがそのまま見ていただけます。
1 点だけ補足いたします。当店のウエンディティのページには「レゴリ」「レグロイ」の写真も並んでいますが、C. legroi は現在 C. walkeri(ワルケリィ)の異名として整理されており、ウエンディティとは別の種です。同じスリランカ産で姿も近いため一緒に並べられてきましたが、学名のうえでは別ものとご理解ください。
いまの正式な学名: Cryptocoryne wendtii de Wit (1958) — POWO / WCVP で ACCEPTED (正式に認められた学名)。異名は Rataj が 1975 年に立てた 4 つの変種名だけです
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 1958 | H.C.D. de Wit が Cryptocoryne wendtii を記載。ドイツの水草愛好家 Albert Wendt (1887–1958) への献名 | Meded. Bot. Tuinen Belmonte Arbor. Wageningen 2(4): 97–101 (学名は 100 頁) / IPNI |
| 1975 | Rataj が 4 変種 (var. jahnelii / var. krauteri / var. nana / var. rubella) を記載 | Stud. Ceskoslov. Akad. Ved. 3 (Rev. Gen. Cryptocoryne): 72–73 / IPNI |
| 年不明 | Rataj の 4 変種が異名として整理される (統合が確定した年・論文は特定できず) | 不明 |
| 年不明 | 「トロピカ」「ミオヤ」「グリーンゲッコウ」等の栽培品種名が流通に定着 (作出年・命名年は特定できず。いずれも学名ではない) | 不明 |
| 2001–2006 | 当店の図鑑にスリランカ産・ナウラ産・ブラウン・ミオヤレッド・トロピカ・グリーンゲッコウ・水上株の各ページが撮影日つきで並ぶ | 当店ページ (Cryptocoryne_wendtii.htm) の記載 |
| 2026 現在 | POWO / WCVP で C. wendtii de Wit が ACCEPTED。異名は Rataj の 4 変種名のみ | WCVP (Kew) 2026-08-04 確認 |
2026 年現在、Cryptocoryne wendtii de Wit は POWO / WCVP で正式に認められた学名 (ACCEPTED) です。異名として登録されているのは Rataj が 1975 年に立てた 4 つの変種名 (jahnelii / krauteri / nana / rubella) だけで、これらはすべて本種に吸収されました。流通名の「トロピカ」「ミオヤ」「グリーンゲッコウ」「ブラウン」などは栽培品種名であり、学名ではありません。分布はスリランカ中部です。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園、2026-08-04 確認)/ The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営、cryptocoryneworld.org)/ Meded. Bot. Tuinen Belmonte Arbor. Wageningen 2(4) (1958, de Wit)・Rataj 1975。