クリプトコリネ ベルステギィは本文準備中
クリプトコリネ ベルステギィは、ニューギニア島に自生する数少ないクリプトコリネのひとつです。標本が採られたのは 1907 年、第 1 次ローレンツ探検隊のとき。隊の医師であり植物学者でもあった Versteeg(ベルステフ)氏が、ノールト川(Noord-Fluss、のちにローレンツ川と改称)沿いの Zandvoort と Sabangkamp 付近、沼の点在する丘陵地で採集しました。この標本(Versteeg 1248)はオランダのライデン国立植物標本館に収められ、それをもとに 1910 年、Engler(エングラー)氏が Nova Guinea 8 巻 251 頁で記載しています。種小名 versteegii は、この採集者への献名です。
その後、この植物はほとんど採集されないまま長い時間が過ぎました。近年になって 1998 年、Bruce Hansen(ブルース ハンセン)氏がパプアニューギニアのキコリ(Kikori)付近で確認しています。生えていたのは潮の満ち引きの影響を受ける帯(潮間帯)で、幅広の葉をもつ C. ciliata(キリアータ)と一緒に群生していました。分布はインドネシア領パプアとパプアニューギニアの両側にまたがりますが、記録そのものが少ない種です。
見分けの手がかりは花にあります。仏炎苞(ぶつえんほう=花を包む苞)は襟(えり=舷部と喉の境にできる輪状の張り出し)が高い位置につき、舷部(げんぶ=仏炎苞の開いた面)の表面はざらつきます。舷部が大きく開く個体もあれば、細く狭い個体もあり、幅があります。厚みのある一様な緑の葉をもち、潮間帯に生えるという点で C. lingua(リングア)とよく似て見えますが、両者は近縁ではありません。決め手は染色体数(せんしょくたい=細胞の中にある遺伝情報の束の本数)で、ベルステギィは 2n = 34、リングアは 2n = 36。別のグループに属することがはっきりしています。
2014 年には新しい変種が加わりました。Jacobsen・Bastmeijer・Edwards・Johns・高橋・Wongso の 6 氏が Willdenowia 44 巻 385〜391 頁で var. jayaensis(ジャヤエンシス)を記載したものです。インドネシア・パプア州ティミカ周辺の平地を流れる川(水素イオン濃度 pH 6.64、水温 26.2 ℃)に自生し、葉身が長く柔らかいこと、舷部が短くざらついた赤色で喉が明るい黄色になること、地下茎(ちかけい=根茎)が目立って長く伸びることで基本変種と区別されます。栽培株は世界的にごくわずかで、デンマーク・ドイツ・オランダに小さなコレクションがある程度と報告されており、成長も遅い難物です。当店ページは本文が準備中でしたので、ここに学名の歩みを補いました。
いまの正式な学名: Cryptocoryne versteegii Engl. (1910) — POWO / WCVP で ACCEPTED (正式に認められた学名)。var. versteegii (基本変種) と var. jayaensis の 2 変種がいずれも ACCEPTED として認められています
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 1907 | 第 1 次ローレンツ探検隊の医師兼植物学者 Versteeg がニューギニアで採集 (Versteeg 1248、ライデン国立植物標本館) | The Crypts pages・cryptocoryneworld.org (J.D. Bastmeijer) |
| 1910 | Engler が Cryptocoryne versteegii として記載 | Nova Guinea 8: 251 / IPNI |
| 1907〜1998 | 採集記録がきわめて少ない状態が続く | The Crypts pages (J.D. Bastmeijer) |
| 1998 | Bruce Hansen がパプアニューギニアのキコリ付近で確認。潮間帯で幅広葉の C. ciliata と混生 | The Crypts pages (J.D. Bastmeijer) |
| 染色体数 | 2n = 34。見た目の似た C. lingua (2n = 36) とは別グループと判明 | The Crypts pages (J.D. Bastmeijer) |
| 2014 | Jacobsen・Bastmeijer・Edwards・Johns・Takahashi・Wongso が var. jayaensis を記載 (インドネシア・パプア州ティミカ周辺) | Willdenowia 44(3): 385–391 (2014) / IPNI |
| 2026 現在 | POWO / WCVP で C. versteegii Engl.、var. versteegii、var. jayaensis がいずれも ACCEPTED | WCVP (Kew) 2026-08-04 確認 |
2026 年現在、Cryptocoryne versteegii Engl. は POWO / WCVP で正式に認められた学名 (ACCEPTED) です。異名の登録はなく、下位に var. versteegii (基本変種) と 2014 年記載の var. jayaensis の 2 変種が、いずれも ACCEPTED として認められています。1910 年の記載から今日まで、種としての扱いは変わっていません。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園、2026-08-04 確認)/ The Crypts pages・cryptocoryneworld.org(J.D. バスメイヤー氏 運営)/ Nova Guinea 8: 251 (1910, Engler)・Willdenowia 44(3): 385–391 (2014, Jacobsen・Bastmeijer・Edwards・Johns・Takahashi・Wongso)。