クリプトコリネ イデイィは中央カリマンタンに分布する新種のクリプト。出射氏の記載により新種となる。葉は薄く鏃型が特徴。
クリプトコリネ イデイイは、2004 年にドイツの専門誌 Aqua Planta 29(4) 号(124〜130 頁)で Budianto(ブディアント)氏が新種として発表した、中央カリマンタンのクリプトコリネです。種名の ideii は、この植物を現地で採集した日本の採集家 出射(いでい)氏の名にちなむ献名(けんめい=人の名をとって付けた学名)です。当店のページには「出射氏の記載により新種となる」とありますが、正確には「出射氏が採集した株にもとづいて記載され、その功績をたたえて出射氏の名が学名になった」という関係になります。学名の末尾に付く人名は記載者を表すこともあれば、このように献名を表すこともあり、イデイイは後者です。
本種はフィリピンに分布する C. pygmaea(ピグマエア)に姿がよく似ています。それでも別種と判断できた決め手は染色体(せんしょくたい=細胞の中にある遺伝情報の束)の数で、イデイイは 2n = 20、ピグマエアは 2n = 34 とはっきり違います。加えて葉の色が明るい緑であること、葉の縁がゆるく波打つこと、葉柄(ようへい=葉の柄)が比較的長いこと、仏炎苞(ぶつえんほう=花を包む苞)の尾が長く筒がごく短いこと、雌花の花柱が長いことなどが、区別の手がかりとして挙げられています。
分布は中央カリマンタンで、The Crypts pages によれば確実に知られているのは 1 か所だけ。しかもそこでは C. fusca(フスカ)と一緒に生えており、乾季には岸辺や岸近くの浅い水中で育つとされています。カリマンタンの離れた場所で採れた似た株が本種かどうかは、まだはっきりしていません。当店のページが記録しているカリマンタン中央区クアラクアヤン産の水中葉(2004 年 12 月〜2005 年 4 月撮影)は、そうした数少ない実物の記録のひとつです。
いまの正式な学名: Cryptocoryne ideii Budianto (2004) — POWO / WCVP で ACCEPTED (正式に認められた学名)。異名の登録はありません
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 2004 | Budianto が Cryptocoryne ideii を新種として記載。日本の採集家 出射 (Idei) 氏への献名 | Aqua Planta 29(4): 124–130 |
| 2004 | 染色体数 2n=20 と報告。よく似たフィリピンの C. pygmaea (2n=34) と区別する決め手になる | Aqua Planta 29(4): 124–130 / The Crypts pages |
| 記載以降 | 確実な産地は中央カリマンタンの 1 か所のみ (C. fusca と混生)。他地域の類似株が本種かどうかは未確定 | The Crypts pages (J.D. Bastmeijer) |
| 年不明 | 記載者 Budianto 氏のフルネームは IPNI の著者表記が「Budianto」のみで、今回の調査では確認できず | 不明 |
| 2026 現在 | POWO / WCVP で C. ideii Budianto が ACCEPTED。異名の登録なし | WCVP (Kew) 2026-08-04 確認 |
2026 年現在、Cryptocoryne ideii Budianto は POWO / WCVP で正式に認められた学名 (ACCEPTED) です。異名は 1 つも登録されておらず、2004 年の記載から今日まで名前は変わっていません。分布はボルネオ島 (カリマンタン) です。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園、2026-08-04 確認)/ The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営)/ Aqua Planta 29(4) (2004)。