クリプトコリネ クルダシアナは
クリプトコリネ クルダシアナは、ミャンマー(ビルマ)北部だけに知られる、この属の中でもとりわけ産地の限られた水草です。最初に採集されたのは 1889 年で、1900 年にインドで植物研究を率いていた Prain(プレイン)が新種として記載しました。翌 1901 年にはカルカッタ王立植物園の紀要に図版つきの詳しい記載が載り、姿かたちは早い時期から記録されていました。ところがそのあと 100 年以上、実物がほとんど再採集されないという、たいへん珍しい経過をたどります。
「名前と図はあるが実物がない」状態が長く続いたため、途中で混乱も起きました。1975 年、チェコスロバキアの Rataj(ラタイ)がミャンマー産のクリプトコリネをクリプトコリネ ブルメンシス(Cryptocoryne burmensis)という別の新種として記載しましたが、のちにこれはクルダシアナと同じものと判断され、現在は異名(いめい=同じ植物につけられた別名)に整理されています。学名は先に発表されたほうが優先される決まり(先取権)ですので、1900 年のクルダシアナが残りました。
流れが変わったのは 2005 年の暮れです。日本の Murata(ムラタ)氏がミャンマー北部で開花中の株を確認し、100 年以上ぶりに生きた姿が記録されました。その後ヨーロッパの植物園、とくにミュンヘン植物園での栽培が軌道に乗り、少しずつ実物に触れられる種になっています。分布はミャンマー北部カチン州の丘陵地で、エーヤワディー(イラワジ)川の上流域、ミッチーナやシンブイヤンの周辺から記録されています。
ミャンマーは長く外国人の植物調査が難しい土地でしたので、クルダシアナが「図鑑には載っているのに誰も見たことがない種」であり続けたのには、そうした事情もあります。分類の上では 1900 年の記載以来、独立した種としての扱いが揺らいだことはありません。
いまの正式な学名: Cryptocoryne cruddasiana Prain (1900) — 現在も独立種として有効。異名に C. burmensis Rataj (1975)
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 1889 | ミャンマー北部で最初に採集される | The Crypts pages (J.D. バスメイヤー) |
| 1900 | Prain が Cryptocoryne cruddasiana を独立種として記載 | J. Asiat. Soc. Bengal, Pt. 2, Nat. Hist. 69(2): 174 |
| 1901 | 図版つきの詳しい記載が発表される | Ann. Roy. Bot. Gard. Calcutta (1901) ※巻・頁は特定できず |
| 1975 | Rataj が Cryptocoryne burmensis を記載 (のちに cruddasiana の異名に整理される) | Stud. Ceskoslov. Akad. Ved 3 (Rev. Gen. Cryptocoryne): 32 |
| 2005 | ★ 日本の Murata 氏がミャンマー北部で開花株を確認。100 年以上ぶりに生きた姿が記録される | The Crypts pages (J.D. バスメイヤー)。原報の誌名・巻頁は特定できず |
| 2009 | Bogner による現代的なまとめが発表される | 不明 |
| 2026 現在 | POWO / WCVP で Cryptocoryne cruddasiana Prain が ACCEPTED。異名は C. burmensis Rataj | WCVP (Kew) 2026-06-04 版 |
2026 年現在、Cryptocoryne cruddasiana Prain は独立した種として正式に認められています(ACCEPTED)。1900 年の記載以来、種としての扱いは一度も変わっていません。1975 年に別名として発表された C. burmensis Rataj のほうが、あとから異名(いめい=同じ植物につけられた別名)に整理されました。ミャンマー北部カチン州の限られた地域にのみ知られる種です。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引、86679-1)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園)2026-06-04 版 / The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営)/ J. Asiat. Soc. Bengal 69(2) (1900) / Rataj, K. (1975) Revision of the genus Cryptocoryne, Stud. Ceskoslov. Akad. Ved 3。