クリプトコリネ ザイディアナは本文準備中
クリプトコリネ ザイディアナは、ボルネオ島サラワク州で見つかった、比較的あたらしい水草です。2005 年、マレーシア・サラワク大学の Ipor(イポール)氏と Tawan(タワン)氏が新種として記載しました(Gardens' Bulletin Singapore 57 巻 1 号、1〜6 頁)。産地はミリ管区ティンジャール水系のスンガイメリン(Sungai Mering)で、今のところこの一か所しか知られていません。種小名の zaidiana は、サラワク州知事(Yang di-Pertua Negeri)を務めた故 Tun Ahmad Zaidi(トゥン・アフマド・ザイディ)氏への献名(けんめい=人の名にちなんで名づけること)です。
葉だけを見ると C. lingua(リングア)や C. ciliata(キリアタ)に似ています。厚みのある滑らかな葉で、葉の付け根は切ったような形(切形)から浅いハート形になり、小さな耳状の張り出しがつきます。決め手になるのは花のほうで、仏炎苞(ぶつえんほう=花を包む苞)は筒の長いつくりをしており、開いた舷部(げんぶ)は幅 1 cm ほど。白い地に黒紫色の粗いいぼ状の突起が並び、喉元は紫色に染まります。花柱(かちゅう=めしべの首の部分)が長く伸びるのも、ほかのクリプトコリネには見られない特徴として記載されています。
生えている場所は川岸の泥地です。原記載では、潮の満ち引きで水位が上下する淡水の潮汐域(ちょうせきいき)の、砂まじりの粘土の上に小さな群落をつくると報告されています(塩水がさかのぼる汽水域ではなく、あくまで淡水の範囲です)。水中でも水上でも育つ両生(りょうせい)の性質をもち、栽培では丈夫に育つ一方で、ランナー(走出枝=横に伸びて子株をつくる茎)はあまり出さないとされます。
分類のうえでは、記載から今日まで揺らぎがありません。2017 年に Willdenowia 誌でボルネオ島のクリプトコリネが総括された際、2000 年代の現地調査によって新たに加わった 6 タクサ(分類群)の 1 つとしてザイディアナが挙げられ、同じ検索表のなかで C. isae(イサエ)との見分け方も示されました。2005 年の記載から現在まで、この学名は一度も別名に置き換えられていません。なお染色体数(せんしょくたい=細胞の中にある遺伝情報の束の数)については、今回の調査で確かな出典を確認できなかったため「不明」としておきます。
いまの正式な学名: Cryptocoryne zaidiana Ipor & Tawan (2005) — WCVP (キュー王立植物園) で ACCEPTED (正式に認められた学名)。異名の登録は確認できません
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 2005 | Ipor & Tawan が Cryptocoryne zaidiana を新種として記載 (サラワク州ミリ管区ティンジャール水系スンガイメリン産)。種小名はサラワク州知事を務めた故 Tun Ahmad Zaidi 氏への献名 | Gard. Bull. Singapore 57(1): 1–6 (記載は 2 頁、2005-09-30 刊) |
| 記載以降 | 産地はスンガイメリンの 1 か所のみが知られる。川岸の砂質粘土の泥地に小群落をつくる | The Crypts pages (J.D. Bastmeijer) / 原記載 |
| 2017 | ボルネオ産クリプトコリネの総括で、2000 年代の現地調査によって加わった 6 タクサの 1 つとして挙げられる。検索表で C. isae と区別 (ザイディアナは筒の長い仏炎苞・幅 1 cm ほどの舷部・白地に黒紫の粗い突起・紫の喉元) | Willdenowia 47(3): 325–339 |
| 染色体数 | 確かな出典を確認できず | 不明 |
| 2026 現在 | WCVP で C. zaidiana Ipor & Tawan が ACCEPTED。異名の登録は確認できず | WCVP (Kew) 2026-06-04 版、GBIF 経由 2026-08-04 確認 |
2026 年現在、Cryptocoryne zaidiana Ipor & Tawan は WCVP (キュー王立植物園) で正式に認められた学名 (ACCEPTED) です。2005 年の記載から今日まで一度も別名に置き換えられておらず、異名の登録もありません。産地はサラワク州スンガイメリンの 1 か所だけが知られています。染色体数は今回の調査では確かな出典を確認できなかったため不明としています。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引、2026-08-04 確認)/ WCVP(キュー王立植物園 2026-06-04 版、GBIF 経由で確認)/ The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営、cryptocoryneworld.org)/ Gardens' Bulletin Singapore 57(1) (2005, Ipor & Tawan)/ Willdenowia 47(3) (2017)。