クリプトコリネ コグナトイデスは本文準備中
クリプトコリネ コグナトイデスは、1931 年にインドで植物調査をしていた Blatter(ブラッター)と McCann(マッキャン)が、独立した種として記載した水草です。名前は、同じインドに分布する近縁のクリプトコリネ コグナータ(Cryptocoryne cognata)に似ている、という意味でつけられました。産地はインド西岸を南北に走る西ガーツ山脈(にしガーツさんみゃく=インド亜大陸の西側にある古い山地。多くの固有種を産む場所として知られます)で、しかもその中でも標高の高い場所です。
記載されたあと、この植物は長いあいだ実物がほとんど手に入りませんでした。改めて現地の株が調べられたのは 1993 年のことで、インドの Yadav(ヤダブ)と Patil(パティル)、ドイツの Bogner(ボグナー)が共同で再検討し、すでに知られていたクリプトコリネ スピラリス(Cryptocoryne spiralis)の変種という位置づけに改めました。これが現在の学名 Cryptocoryne spiralis var. cognatoides です。種として独立させるほどの差はなく、スピラリスという種がもともと持っている幅の中に収まる、という判断です。植物そのものが別物になったわけではありませんし、「コグナトイデス」という呼び名が消えたわけでもありません。
形のうえでは、スピラリスの仲間らしい細長い葉をつけ、栽培下では葉が 50 cm を超えることもあります。いちばんの特徴は仏炎苞(ぶつえんほう=花を包む筒状の苞)が非常に長く伸びることで、同じスピラリスの仲間の中でも目を引きます。染色体数(せんしょくたいすう=細胞の中にある染色体の本数。種や変種を見分ける手がかりになります)は 66/72 と記録されています。現地では雨季と乾季にあわせて season(シーズン、季節)ごとに姿を変える暮らしをしていますが、栽培下では一年を通して育ちます。
スピラリスの仲間は、クリプトコリネの中でも最初に記載された古参のグループで、インドの水辺では田んぼの雑草になるほど身近な種も含まれます。そのグループの中で、標高の高い土地に暮らし、ひときわ長い仏炎苞をつけるのがこのコグナトイデスです。学名の上ではスピラリスの変種ですが、姿の個性ははっきりしています。
いまの正式な学名: Cryptocoryne spiralis var. cognatoides (Blatt. & McCann) S.R.Yadav, K.S.Patil & Bogner (1993) — 旧名 C. cognatoides Blatt. & McCann (1931)。アクアリウムでは「コグナトイデス」の名で親しまれています
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 1931 | Blatter & McCann が Cryptocoryne cognatoides を独立種として記載 (インド西ガーツ山脈産) | J. Bombay Nat. Hist. Soc. 35: 17 |
| 1993 | ★ Yadav・Patil・Bogner が再検討し、C. spiralis の変種 var. cognatoides へ位置づけ直す | Aqua Planta 1993(2): 65 |
| 2013 | Bogner が spiralis 群を再整理 (var. huegelii の扱いなどを更新) | The Crypts pages (J.D. バスメイヤー) 記載の Bogner 2013。誌名・巻頁は特定できず |
| 2026 現在 | POWO / WCVP で Cryptocoryne spiralis var. cognatoides が ACCEPTED。C. cognatoides Blatt. & McCann はその異名 | WCVP (Kew) 2026-06-04 版 |
2026 年現在、Cryptocoryne cognatoides Blatt. & McCann は正式な学名としては使われず、Cryptocoryne spiralis var. cognatoides の異名(いめい=同じ植物につけられた別名)になっています。ただし 1931〜1993 年の約 60 年間、コグナトイデスはまぎれもなく独立した種名でした。アクアリウムでは「コグナトイデス」の名で親しまれています。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引、86673-1 / 971952-1)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園)2026-06-04 版 / The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営、spiralis 群のページ)/ J. Bombay Nat. Hist. Soc. 35 (1931) / Aqua Planta 1993(2)。