RVA レヨンベールアクア水草図鑑

クリプトコリネ ポンテデリフォリア Cryptocoryne pontederiifolia

クリプトコリネ ポンテデリフォリアは本文準備中

この種の混乱は「花のない標本」から始まりました。1833 年ごろ、オランダの植物学者 P.W. コルタルス(Korthals)が西スマトラでこの水草を採集しますが、集まったのは花のない株ばかり。1863 年にウィーンの H.W. ショット(Schott)が、ミクェルの学術誌に「クリプトコリネ属」としてまとめて発表した際も(Annales Musei Botanici Lugduno-Batavi 1 巻 122〜123 頁)、仏炎苞(ぶつえんほう=花を包む苞)は分からないままでした。種小名(しゅしょうめい=学名の後ろ半分)の pontederiifolia は「ポンテデリア属(ミズアオイの仲間)のような葉」という意味です。

約 140 年後、その「花のなさ」がもう一つの学名を生みます。1975 年ごろ、ジャワから輸入された株が栽培下で開花し、鮮やかな黄色い仏炎苞を見せました。これを新種と考えた H.C.D. de Wit は 1976 年、硫黄色を意味する C. sulphurea として記載します(Het Aquarium 46 巻 177 頁)。しかし 1982 年、N. ヤコブセン(Jacobsen)がショットの記載に使われた基準標本(ホロタイプ=学名の物差しとなる、たった一つの標本)を調べ直したところ、未熟な仏炎苞が付いており、それが sulphurea と一致していました。こうして両者は同じ種と確定し、C. sulphurea は異名になりました。

本種の仏炎苞は鮮やかな黄色から紫赤色まで、ほぼ切れ目なく連続して変化します。暗い側の端にあたるのが近縁の C. moehlmannii、そして同じく黄色い仏炎苞を出す C. bogneri とはしばしば混同されます。分布は西スマトラ(パダン周辺など)で、北スマトラのルーセル(Leuser)国立公園からも記録があります。なお当店の旧ページでは pontederifolia(i が 1 つ)と綴っていますが、正式な綴りは pontederiifolia(i が 2 つ)です。長く親しまれた表記ですので、当図鑑では正式綴りを見出しに置き、旧綴りのページはそのまま残しています。

当店のページには「オリエンタル便/東南アジア便、現在は国内ファーム生産」「2003 年 4 月 11 日撮影、全長 10 cm、バラ株」「ランナー(走出枝=地面を這って子株を出す茎)で殖える」と記録があります。また開花画像のページには「濃いピンクから紫色に黄色のコントラストが鮮やか」とあり、これは上で述べた黄色〜紫赤の連続変異を当店の水槽でもそのまま見ていた、ということになります。水上でも水中でもライトグリーンの葉質が変わらないので、水上栽培の入り口としてお勧めしてきた種です。

📜 分類の歩み — この名前はいつ、どう変わったか

いまの正式な学名: Cryptocoryne pontederiifolia Schott (1863) — POWO / WCVP で ACCEPTED (アクセプテッド、正式に認められた学名)。異名 (いみょう=同じ植物に付けられた別の学名) は Cryptocoryne sulphurea de Wit (1976) の 1 件です

できごと文献
1833 ごろオランダの P.W. Korthals が西スマトラで本種を採集。ただし花のない株ばかりだったThe Crypts pages (J.D. Bastmeijer)
1863H.W. Schott が Cryptocoryne pontederiifolia を記載。花が未知のままで、のちの混乱の元になるAnn. Mus. Bot. Lugduno-Batavi 1: 122–123 (IPNI / WCVP)
1975 ごろジャワから輸入された株が栽培下で開花し、黄色い仏炎苞を見せるThe Crypts pages
1976de Wit がこれを新種 C. sulphurea として記載Aquarium (Netherlands) 46: 177 (WCVP)
1982N. Jacobsen が Schott のホロタイプに未熟な仏炎苞を発見。sulphurea と同一と判明し、異名に整理されるThe Crypts pages
2003-04-11当店が入荷株を撮影・紹介 (全長 10cm、バラ株、ランナー繁殖)当店ページ cry_pontederifolia.html
撮影年不明当店が開花画像を公開 (濃いピンク〜紫に黄色のコントラスト)当店ページ cry_pontederifolia-hana.html
2026 現在POWO / WCVP で C. pontederiifolia Schott が ACCEPTED。異名は C. sulphurea de Wit の 1 件のみWCVP (Kew) 2026-08-04 確認

2026 年現在、Cryptocoryne pontederiifolia Schott は POWO / WCVP で正式に認められた学名 (ACCEPTED) です。登録されている異名は C. sulphurea de Wit (1976) の 1 件のみで、1982 年にホロタイプの再検討で同一種と確定して以来、扱いは安定しています。綴りは i を 2 つ重ねる pontederiifolia が正式で、pontederifolia は古い表記です。染色体数については本稿では確かな出典を確認できなかったため不明とします。

※ 出典: IPNI(国際植物名索引)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園、GBIF 上の WCVP 公式データセットで 2026-08-04 確認)/ The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営、cryptocoryneworld.org)/ Schott 1863, Ann. Mus. Bot. Lugduno-Batavi 1: 122–123 / de Wit 1976, Het Aquarium 46: 177 / 当店ページ(cry_pontederifolia.html / cry_pontederifolia-hana.html)。

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