RVA レヨンベールアクア水草図鑑

クリプトコリネ バランサエ Cryptocoryne balansae

バランサエはクリスパチュラグループのクリプトで古くからアクアリウムプランツとしてはよく知られている。

クリプトコリネ バランサエの花 Cryptocoryne crispatula var. balansae クリプトコリネ バランサエ

クリプトコリネ バランサエは、当店ページでもご紹介しているとおり、クリスパチュラ(Cryptocoryne crispatula)のグループに属する水草で、古くからアクアリウムプランツとしてよく知られています。名前のもとになったのは、19 世紀にベトナム北部で植物を集めた採集家 Balansa(バランサ)です。この採集品をもとに、1941 年にフランスの植物学者 Gagnepain(ガニュパン)が Cryptocoryne balansae という独立した種として記載しました。

その後、細長い波打つ葉をもつクリスパチュラの仲間は、産地ごとに姿がよく変わることが分かってきます。1991 年、デンマークの Jacobsen(ヤコブセン)がこのグループ全体を整理し、Gagnepain が別々の種として記載していたバランサエとトンキネンシス(C. tonkinensis)を、いずれもクリスパチュラの変種に位置づけ直しました。これによって現在の学名 Cryptocoryne crispatula var. balansae が生まれています。種が変種に「格下げ」されたように見えますが、植物そのものが別物になったわけではありません。同じ種の中の地域ごとの型として整理し直した、というだけのことです。

クリスパチュラの整理はその後も続き、2010 年にはメコン川流域から var. decus-mekongensis が、さらに近年までに複数の変種が追加されました。2015 年には var. tonkinensis の正体そのものが再検討されています。2026 年現在、クリスパチュラには var. balansae を含めて 9 つの変種が認められており、この属の中でもとくに変種の多い、にぎやかなグループになっています。2025 年には var. balansae の葉緑体ゲノム(ようりょくたいゲノム=光合成をする細胞小器官がもつ独自の DNA。近縁関係を調べる材料になります)が解読され、分子(DNA)の面からの位置づけも進みはじめました。

当店のページには、2002 年 2 月に撮影したバランサエの開花画像を掲載しています。細長い葉が水槽の中でゆらめく姿が知られる一方、花の写真はいまも多くありません。アクアリウムでは古くから「バランサエ」の名で親しまれています。

📜 分類の歩み — この名前はいつ、どう変わったか

いまの正式な学名: Cryptocoryne crispatula Engl. var. balansae (Gagnep.) N.Jacobsen (1991) — 旧名 C. balansae Gagnep. (1941)。アクアリウムでは「バランサエ」の名で親しまれています

できごと文献
1920Engler が Cryptocoryne crispatula を記載 (この種がのちに変種をまとめる受け皿になる)Pflanzenr. Arac.-Aroid. & Pistioid.: 247
1941Gagnepain が Cryptocoryne balansae を独立種として記載 (ベトナム北部、採集家 Balansa の標本にもとづく)Notul. Syst. (Paris) 9: 131
1991★ Jacobsen が crispatula 群を再編。balansae と tonkinensis を変種へ位置づけ直し、5 変種を認めるAqua Planta 1991(1): 29
2010var. decus-mekongensis が追加記載される (メコン川流域)Aqua Planta 35(4): 139–142
2015var. tonkinensis の正体が再検討されるWilldenowia 45(2), doi:10.3372/wi.45.45203
2025var. balansae の葉緑体ゲノムが解読され、系統上の位置づけが報告されるdoi:10.1080/23802359.2025.2449825
2026 現在POWO / WCVP で Cryptocoryne crispatula var. balansae が ACCEPTED。C. balansae Gagnep. はその異名。crispatula には 9 変種が認められるWCVP (Kew) 2026-06-04 版

2026 年現在、Cryptocoryne balansae Gagnep. は正式な学名としては使われず、Cryptocoryne crispatula var. balansae (Gagnep.) N.Jacobsen の異名(いめい=同じ植物につけられた別名)になっています。ただし 1941〜1991 年の 50 年間、バランサエはまぎれもなく独立した種名でした。アクアリウムでは「バランサエ」の名で親しまれています。

※ 出典: IPNI(国際植物名索引、86662-1 / 966652-1)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園)2026-06-04 版 / The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営)/ Notulae Systematicae (Paris) 9 (1941) / Aqua Planta 1991(1) / Aqua Planta 35(4) (2010) / Willdenowia 45(2) (2015)。

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