クリプトコリネ ミニマはマレー半島に分布する
Cryptocoryne minima クリプトコリネ ミニマ クリプトコリネ ミニマは、1910 年にシンガポール植物園長だったイギリスの Ridley(リドレー)が「New or Rare Malayan Plants V」という報告のなかで記載した水草です。種小名 minima はラテン語で「もっとも小さい」。当店の図鑑ページにも「マレー半島に分布する」と書いてきたとおり、ペナン島やケダ州がよく知られた産地で、のちにスマトラ島からも見つかっています。
この種の歩みは、小さくて地味な種が、あとから 3 つも別の名前を付けられてしまった歴史です。1971 年にオランダの de Wit(デ・ウィット)がマレーシア産を C. zewaldiae、1979 年にデンマークの Jacobsen(ヤコブセン)がスマトラ産を C. gasseri、1982 年には両氏が北スマトラのルーセル保護区産を C. amicorum として、それぞれ独立した種として発表しました。ところが栽培下でじっくり育て比べ、その後の現地採集が進むにつれて、これらは 1 つの種がもつ産地ごとの変わり幅にすぎないと考えられるようになります。現在はいずれも Cryptocoryne minima の異名(いめい=同じ植物につけられた別名)として扱われています。ただし「この論文で統合された」と言い切れる年と文献は、今回の調査では特定できませんでした。
形そのものは小型でおとなしいのですが、仏炎苞(ぶつえんほう=花を包む苞)の色や形は産地でよく変わり、それがまさに 3 つの別名を生む原因になりました。当店の図鑑ではミニマとして、ファーム(養殖業者)由来のオリエンタル便の株のほか、「丸ボコ系がおそらくミニマ」としてマレー半島ポンドックタンジョン産のワイルド(現地採集)株も掲載しています。この「おそらく」という書き方は、産地の株を実際に見てきた者ほど断定を避けたくなる、この種の性格をよく表しています。名前が二転三転してきた種ですから、産地の分かる株を産地ごとに見比べられること自体が、そのまま理解の助けになります。
いまの正式な学名: Cryptocoryne minima Ridl. (1910) — 現在も有効な独立種。C. zewaldiae de Wit / C. gasseri N.Jacobsen / C. amicorum de Wit & N.Jacobsen はその異名
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 1910 | Ridley が Cryptocoryne minima を記載 (マレー半島) | J. Straits Branch Roy. Asiat. Soc. 54: 61 |
| 1971 | de Wit がマレーシア産を独立種 Cryptocoryne zewaldiae として記載 | Aquarienpfl. (Deutsche Ausg.): 206 |
| 1979 | Jacobsen がスマトラ産を独立種 Cryptocoryne gasseri として記載 | Bot. Not. 132(2): 144 |
| 1982 | de Wit & Jacobsen が北スマトラ ルーセル保護区産を独立種 Cryptocoryne amicorum として記載 | Nordic J. Bot. 2(5): 455 |
| 1982 以降 | 栽培比較と追加採集により zewaldiae / gasseri / amicorum が minima に統合される (統合を明文化した年・論文は特定できず) | 不明 |
| 2026 現在 | POWO / WCVP で C. minima Ridl. が ACCEPTED。異名は C. amicorum de Wit & N.Jacobsen / C. gasseri N.Jacobsen / C. zewaldiae de Wit の 3 つ | WCVP (Kew) 2026-06-04 版 |
2026 年現在、Cryptocoryne minima Ridl. は独立した種として有効です。キュー王立植物園の WCVP でも ACCEPTED(有効な学名)とされ、かつて独立種として発表された C. zewaldiae・C. gasseri・C. amicorum の 3 つは、いずれもミニマの異名になっています。1910 年の名前が残ったのは、やはり先に発表されたほうが優先される決まり(先取権)によるものです。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引)/ WCVP(キュー王立植物園、2026-06-04 版)/ The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営)/ Journal of the Straits Branch of the Royal Asiatic Society 54 (1910) / Botaniska Notiser 132(2) (1979) / Nordic Journal of Botany 2(5) (1982)。