クリプトコリネ アウリクラータはボルネオサラワク州を分布域にもつ。葉は肉厚で深緑から銀緑の模様を持つ。仏縁苞は小型のずんぐりで色彩は深い紫色。
Cryptocoryne auriculata クリプトコリネ アウリクラータ クリプトコリネ アウリクラータは、1879 年にドイツの植物学者 Engler(エングラー)が、イタリア・フィレンツェの園芸学会誌で記載した種です。同じ論文では Cryptocoryne ferruginea(フェルギネア)も一緒に発表されており、ボルネオ島のクリプトコリネ研究の出発点にあたる仕事といえます。種小名の auriculata は「耳たぶのような(葉の付け根が耳状に張り出す)」という意味です。
この種の特徴は、146 年間ずっと同じ名前のままということです。1920 年には Engler 自身が大著『Das Pflanzenreich(植物界)』で改めて扱い、1970 年には Schulze(シュルツェ)がサラワク州を巡ってエングラーらの原産地を訪ね直し、1985 年には Jacobsen(ヤコブセン)がボルネオ島のクリプトコリネを総まとめしましたが、そのいずれでもアウリクラータは独立した種のまま維持されました。クリプトコリネでは名前の統合・格下げがひんぱんに起きるなかで、これはかなり珍しい安定ぶりです。
分布については見解に幅があります。WCVP はボルネオ島に加えてフィリピンも分布域に挙げますが、The Crypts pages は「サラワク州のごく数か所で知られる」としています。生育場所は石と石のあいだで、雨季には流れが速くなる環境と考えられています。当店のページには、佐々木勇二がサラワク州で採集した産地違い(カンポンタジョック/スンガイバジュット M-SATB1=2002 年 8 月、マドール M-SESM1=2003 年春、カワサン ラランガン M-SEKL1、セララン、ララン)が並んでいます。産地ごとに株を分けて記録してきたこと自体が、分布の実態を語る資料になっています。葉は肉厚で深緑から銀緑の模様が入り、仏炎苞(ぶつえんほう=花を包む苞)は小型でずんぐりし、深い紫色になります。
いまの正式な学名: Cryptocoryne auriculata Engl. (1879) — キュー王立植物園の WCVP で ACCEPTED(正式名)。異名は登録されていません
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 1879 | Engler が Cryptocoryne auriculata を独立種として記載(同じ論文で C. ferruginea も発表) | Bull. Soc. Tosc. Ortic. 4: 302 |
| 1920 | Engler が『Das Pflanzenreich』のサトイモ科モノグラフで改めて扱う | A.Engler, Das Pflanzenreich IV, 23F (1920) |
| 1970 | Schulze がサラワク州を巡り、Beccari と Engler の記載した種を原産地で再採集 | Willdenowia 45(2) (2015) 所載の経緯記述 |
| 1985 | Jacobsen がボルネオ島のクリプトコリネを総整理。auriculata は独立種のまま維持 | Nordic J. Bot. 5(1): 31–50 |
| 2026 現在 | WCVP / POWO で Cryptocoryne auriculata Engl. が ACCEPTED。異名の登録はゼロ。分布は WCVP がボルネオ島とフィリピン、The Crypts pages はサラワク州のごく数か所とする | WCVP (Kew)/2026-08-04 参照 |
2026 年現在、Cryptocoryne auriculata Engl. は独立した正式な種として認められており、異名(別名)は 1 つも登録されていません。1879 年の記載から一度も名前が動いていない、クリプトコリネとしては珍しく安定した種です。分布はボルネオ島サラワク州が中心で、フィリピンの記録については資料により扱いが分かれます。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園、2026-08-04 参照)/ The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営)/ Nordic Journal of Botany 5(1) (1985)/ Willdenowia 45(2) (2015)/ Bull. Soc. Tosc. Ortic. 4 (1879)。