RVA レヨンベールアクア水草図鑑

クリプトコリネ ディデリキ Cryptocoryne diderici

クリプトコリネ ディデリキはコルダータ ゾナータともに分類の再整理が2002年ヤコブセン氏により行われた。
これまで

クリプトコリネ ディデリキは、1970 年にオランダの植物学者 de Wit(デ・ウィット)が独立した種として記載した水草です(Meded. Bot. Tuinen Belmonte Arbor. Wageningen 13 巻 279 頁)。当店主が 2002 年 7 月に中央カリマンタンの川を巡ってこの水草を集めていた当時、「ディデリキ」は学術的にも正式な種名でした。

その後、コルダータ(Cryptocoryne cordata)の仲間をまとめて見直す研究が進みます。2002 年、Jacobsen(ヤコブセン)はディデリキをコルダータの変種 C. cordata var. diderici に位置づけ直しました(Aqua Planta 27 巻 4 号 151 頁)。当店の本ページに以前から「コルダータ ゾナータともに分類の再整理が 2002 年ヤコブセン氏により行われた」と書いてあるのは、まさにこの出来事のことです。同じ号の同じあたりで、ゾナータとグラボウスキーもコルダータの変種にまとめられました。

さらに 2023 年、Aroideana(アロイデアナ)46 巻 3 号の論文(1〜23 頁、ヤコブセン・ウォンソ・オアゴー 共著)で、染色体数(せんしょくたいすう=細胞の中の染色体の本数)を軸にした大きな再編が行われました。二倍体(2n=34)のコルダータ、四倍体(2n=68)のグラボウスキー、六倍体(2n=102)のシアメンシスが、それぞれ独立した種として復活したのです。ディデリキは六倍体のまとまりに入るため、コルダータではなくシアメンシスの変種 C. siamensis var. diderici(同誌 9 頁)に移されました。つまり 1970〜2002 年の「独立種 diderici」も、2002〜2023 年の「コルダータの変種 diderici」も、いまはどちらも異名(いめい=同じ植物につけられた別名)です。植物そのものが別物になったわけではなく、名前の置き場所が二度動いただけです。

当店が実際に見てきたのは、中央カリマンタンの各河川の株です。パンカランブンのスンガイ スカピタニ(I-PASK)とスンガイ シントック 2(I-PASS2)、サンピットのスンガイ バンカル(I-SASB)とスンガイ コル(I-SAKK2)、コタワリンギンのスンガイ ベンクアン デサ バブアル(I-KOBB)、そしてタミヤンラヤンのダユ(TLD1・TLD2)。産地ごとに葉の色や形が大きく変わるのは、この仲間そのものがもつ幅の広さです。なお、変種としての正確な分布範囲は資料によって記述が分かれるため、ここでは確定的なことは書きません。


📜 分類の歩み — この名前はいつ、どう変わったか

いまの正式な学名: Cryptocoryne siamensis var. diderici (de Wit) Ørgaard (2023) — 旧名 C. diderici de Wit (1970)、続いて C. cordata var. diderici (de Wit) N.Jacobsen (2002)。アクアリウムでは「ディデリキ」の名で親しまれています

できごと文献
1970de Wit が Cryptocoryne diderici を独立種として記載Meded. Bot. Tuinen Belmonte Arbor. Wageningen 13: 279 (IPNI 86683-1)
2002Jacobsen が cordata 複合体を再編。C. cordata var. diderici へ降格 (同じ号で zonata・grabowskii も変種化)Aqua Planta 27(4): 151 (IPNI 60431915-2)
2002-07★ 当店主・佐々木勇二が中央カリマンタン各地 (パンカランブン / サンピット / コタワリンギン / タミヤンラヤン) で採集当店 図鑑ページ (現地画像 2002/07)
2023★ 染色体数を軸に再編。六倍体 (2n=102) のまとまりが C. siamensis として独立種に復活し、ディデリキはその変種 C. siamensis var. diderici へAroideana 46(3): 9 (論文は 1–23 頁)
2026 現在POWO / WCVP で C. siamensis var. diderici (de Wit) Ørgaard が ACCEPTED。C. diderici de Wit と C. cordata var. diderici はどちらも異名WCVP (Kew) 2026-08-04 参照

2026 年現在の正式な学名は Cryptocoryne siamensis var. diderici (de Wit) Ørgaard です。1970 年の C. diderici de Wit も、2002〜2023 年に使われた C. cordata var. diderici も、いまは異名として扱われます。ただしディデリキという名前そのものは 1970 年から一貫して同じ植物を指し続けており、アクアリウムでは「ディデリキ」の名で親しまれています。

※ 出典: IPNI(国際植物名索引、レコード 86683-1 / 60431915-2 / 77336231-1)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園、2026-08-04 参照)/ The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営)/ Aqua Planta 27(4) (2002) / Aroideana 46(3): 1–23 (2023)。

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