クリプトコリネ アポノゲチフォリアはフィリピンのルソン島南部などの分布が知られている長葉凸凹系の美しい草体。
クリプトコリネ アポノゲチフォリアは、1919 年にアメリカの植物学者 Merrill(メリル)が『フィリピン科学誌』で記載した、フィリピン固有の大型種です。種小名は水草アポノゲトン(Aponogeton)に葉の形が似ていることに由来します。当店のページに書いてあるとおり、細長くて葉面が強く盛り上がる(ブラート=波打つように凹凸が出る状態)美しい草体で、条件が合えば葉が 1 メートルを超えることもある、属のなかでも最大級のクリプトコリネです。
この種には、名前が長く埋もれていた時期があります。フィリピンにはすでに 1905 年に Engler(エングラー)が記載した Cryptocoryne usteriana(ウステリアナ)があり、アポノゲチフォリアは長いあいだそれと同じものと見なされ、ウステリアナの異名(いめい=同じ植物につけられた別名)として扱われていました。流れが変わったのは 1980 年代前半で、ドイツの Bogner(ボグナー)がフィリピンで実際に採集した材料により、両者が別種であることが確かめられます。その後 de Wit(デ・ウィット)が 1990 年に、細長くて凹凸のある葉=アポノゲチフォリア、卵形の葉=ウステリアナと整理しました。この経緯のため、水槽で「ウステリアナ」として流通してきた株の多くが、実際にはアポノゲチフォリアだと指摘されています。
現在確実に知られている自生地は、ルソン島南部のソルソゴン州とアルバイ州です。かつてはネグロス島やパナイ島の記録もありましたが、現状は不確かとされます。当店のページはルソン島南部の分布を挙げており、現在の理解と一致しています。
Cryptocoryne aponogetifolia クリプトコリネ アポノゲチフォリアいまの正式な学名: Cryptocoryne aponogetifolia Merr. (1919) — キュー王立植物園の WCVP で ACCEPTED(正式名)。異名は登録されていません
| 年 | できごと | 文献 |
|---|---|---|
| 1905 | Engler が同じフィリピン産の Cryptocoryne usteriana を記載 | A.Usteri, Beitr. Kenntn. Philipp.: 130 |
| 1919 | Merrill が Cryptocoryne aponogetifolia を独立種として記載 | Philipp. J. Sci. 14: 370 |
| 1919〜1970 年代 | 長く C. usteriana と同一視され、aponogetifolia は異名扱いになる(最初に異名としたのが誰か・公表年は特定できず) | 不明 |
| 1980 年代前半 | Bogner がフィリピンで採集した材料により、両者が別種であることが確認される | The Crypts pages(C. aponogetifolia / C. usteriana) |
| 1990 | de Wit が「細長くブラートな葉=aponogetifolia/卵形の葉=usteriana」と整理し混同が解消 | H.C.D. de Wit, Aquarienpflanzen, 2. Aufl. (1990) |
| 2026 現在 | WCVP / POWO で Cryptocoryne aponogetifolia Merr. が ACCEPTED。異名の登録はゼロ。分布はフィリピン。C. usteriana も別の独立種として ACCEPTED | WCVP (Kew)/2026-08-04 参照 |
2026 年現在、Cryptocoryne aponogetifolia Merr. は独立した正式な種として認められており、異名(別名)は 1 つも登録されていません。かつては Cryptocoryne usteriana と同じものとされていましたが、1980 年代以降の再検討で別種と確定しました。水槽で「ウステリアナ」の名前で出回ってきた大型株には、実際にはアポノゲチフォリアが含まれる点に注意が必要です。
※ 出典: IPNI(国際植物名索引)/ WCVP・POWO(キュー王立植物園、2026-08-04 参照)/ The Crypts pages(J.D. バスメイヤー氏 運営)/ Philipp. J. Sci. 14 (1919)/ H.C.D. de Wit, Aquarienpflanzen 2. Aufl. (1990)。